
こんにちは、マダムソムリエです。 ロダン美術館には、オーギュスト・ロダンの作品と彼と師弟関係にあった彫刻家の作品も展示されています。中でも才能溢れる女流彫刻家カミーユ・クロデールの作品は、見る人の心をギュッと鷲づかみするようなものばかり。どんな彫刻家でどういった作品を制作したのかご紹介しましょう。
ロダンの弟子で愛人だったカミーユ・クローデル
カミーユ・クローデルは、19世紀後半から20世紀前半に活躍したフランス人女性彫刻家。
12歳で彫刻を始めその早熟な才能を認めた父親は彫刻家の道を勧めましたが、母親は断固反対で、それはカミーユの生涯にわたっていました。当時、女性芸術家、ましてや女性の彫刻家に社会的経済的地位は皆無に等しかったろうと思うと、母親の反対は娘への愛情であったのかもしれません。カミーユには弟と妹がいますが、弟のポール・クロデールは、外交官になり作家としても活躍しました。
さて、ある日女性芸術サークルで19歳のカミーユに出会ったロダンは、彼女をひと目で気に入りモデルに、カミーユはロダンから彫刻を学びます。若い頃のカミーユには、無垢な美しさがありますね。ロダンの下でカミーユは彫刻家としての才能をメキメキ発揮。モデルから師弟関係、そして愛人関係として発展、二人は生活を供にしますが、ロダンにはすでに内縁の妻がいました。

カミーユが28歳で制作したロダンの胸像。弟子入りして10年を経たこの作品を見て、作風にロダンの影響を受けていると思います。彫刻家としての才能は稀有である、とロダンも彼女の才能に嫉妬したかもしれません。
しかしどんなに才能に恵まれていても、彼女は作品を発表するたびに、ロダンのコピーと揶揄され、才能とは裏腹に世間ではまったく評価されませんでした。私生活では、ロダンの子を妊娠するも流産してしまいます。カミーユとローズの間で揺れていたロダンも、最後はローズの元へ戻っていきます。
1899年ごろにロダンと別れたカミーユは、独自のスタイルで制作に没頭します。が仕事も生活もうまくいかずに精神を病んだカミーユは、強制的に入院させられた精神病院で約30年間を過ごし、最後は誰にも見取られずに亡くなりました。
一方で個人美術館を持つことが晩年の夢だったロダンは、カミーユの作品を集めた部屋を作るよう言い残したと言われています。ロダンの彼女への罪滅ぼしだったのでしょうか。でもそのおかげでカミーユの作品を見ることができました。ロダンの作品についてはこちらでご紹介しています。
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カミーユ・クローデルの主な作品
ロダン美術館で常設されているカミーユ・クロデールの作品をいくつか見てみましょう。

葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の影響を受けていると言われる作品「波」。女性3人が手をつないで、大きな波にのみこまれないようにしているように見えます。この大きな波は、ロダンとカミーユの愛人関係を良しとしない社会の荒波か、それともいくら作品を発表しても一向に評価されない美術界の荒波なのか。
女性たちをよく見ると、波を見上げて恐怖の表情を浮かべている様子や、波に立ち向かおうとする姿勢がうかがえます。この頃は、カミーユにとって公私ともにとても辛い時期だったのではないかと想像しました。
さてここからは、ロダンと別れて自分の道を邁進しているカミーユの作品が続きます。
カミーユの高い技量にロダンも驚く

硬い大理石を、ここまで柔らかく滑らかに表現できるカミーユの技術には驚くばかりです。二人が寄り添い支えあう姿と柔らかな表情に、どうしてもロダンとカミーユの二人を重ねてしまいます。

2歳年下の弟、ポール・クロデール37歳の胸像です。ポールが13歳の頃から、折にふれてカミーユは胸像を制作してきました。きっと姉弟は小さい頃から仲がよかったのだと思いました。後年、彼は外交官になったがために、精神病院に入院したカミーユを見舞う機会がほとんどなかったことを後悔したそうです。

ロダンへの断ち切れぬ思いを現したカミーユの代表作。追いすがる若い女性、老いた女性(悪魔)に導きられるように去っていく男性。老いた女性の両手が男性の両腕をしっかりつかんで、何かささやいているようです。男性は苦悩の表情を浮かべながら若い女性のすがる両手をすっと離す。
ロダンへの行き場のない愛情と胸がはちきれんばかりの強い哀しみが感じられます。「行かないで」とカミーユが叫んでいるようです。

カミーユ・クローデルの傑作「ワルツ」。二人のワルツが一瞬で止まり、すぐにステップを踏みださないと、二人とも倒れてしまいそうな作品。カミーユは、音楽家・ドビュッシーとも親交がありました。ドビュッシーは、この作品を手に入れると亡くなるまでピアノのそばに置いていました。
カミーユ・クローデルは、自分の心の奥にある感情を隠さず作品に注ぎ込むタイプの芸術家なので、見る側の心により大きく響くと思います。
まとめ
カミーユの作品を見ると、「せめて20世紀半ばに生まれていたら、もっと活躍できたし正当な評価を美術界から得られたのではないか」と思う一方で、「ロダンという巨匠がいたから、自分の才能を開花することができたのかもしれない」と私は思いました。
彼女は、精神を病み始めたときにかなりの数の作品を自分自身で破壊してしまったそうで、90作品ほどしか残っていないらしいです。本当に残念。
カミーユの作品を紹介している動画がありますが、女性ならではの細やかさと暖かさを感じる作品があって面白かったです。(スペイン語/4分22秒)
ロダン美術館の基本情報
ロダン美術館は、庭園も美しいのでゆっくり時間をかけて訪れることをおススメします。
- Musée Rodin (英語)
- : 79, rue de Varenne, 75007 Paris
- : 01 44 18 61 10
- : 10:30-18:30
- 休館日:月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
- 地下鉄:13番線Varenne または 13番線&8番線 Invalides
- 入場料:12€(一般)/ウェブサイトでの購入は13€
21€(3ヶ月有効のオルセー美術館と共通チケット)
当日並ばないためにウェブサイトでのチケットの購入をおススメします - オーディオガイド:6€(英語、フランス語)
- 入場料無料:10月から翌年3月までの各第一日曜日
- ミュージアムチケット:利用可能
- 写真撮影:フラッシュ抜きで撮影可能
“パリのロダン美術館で感じる!カミーユのロダンへの深い愛情” への1件のフィードバック