
こんにちは、マダムソムリエです。
先日、友人がオランジュリー美術館に展示されているクロード・モネの「睡蓮」にいたく感動し、「絶対見たほうがいい、スゴイよ」と。個人的には、印象派の作品にはあまり興味がなかったのですが、行ってみてとても良かった!
本当に素晴らしい作品でした。薦めてもらってよかった!というわけで、オランジュリー美術館が展示するモネの睡蓮についてご紹介しましょう。
オランジュリー美術館はモネの睡蓮専用の美術館?!
20世紀初め、フランスの画家で印象派の巨匠、クロード・モネは、70歳代に差し掛かりました。
この頃のモネは、最愛の妻と長男を相次いで亡くし、さらには白内障が悪化し手術を受けるという苦難に見舞われます。
それでも彼は、フランス共和国に寄贈する作品「睡蓮」を完成させるために、苦難に臆することなく、筆を取り作品を書き続けました。
なぜならその作品を自然の光が降り注ぐ専用の美術館に展示することが、彼の人生において最後の望みだったからです。
1927年、この小さな美術館は完成しましたが、もともとはナポレオン3世が建てたオレンジを栽培するための温室(オランジュリー)でした。陽の光をたくさん取り入れた造りだったことを生かして、モネの「睡蓮」の連作を展示することになりました。
その後大きな改築を経て、現在は自然光が降り注ぐ明るい大広間に、壁一面に広がる睡蓮を見ることができます。晴れた日は明るくて実に気持ちの良いところです。
モネはどうして睡蓮の連作を制作したのか
オランジュリー美術館では、2つの大広間に4枚ずつの連作、計8枚が壁一面に展示されていますが、なぜモネはモチーフを睡蓮に選び連作したのか、なぜフランス共和国にわざわざ寄贈したのか、不思議に思ったので調べてみました。
なぜ連作なの?
モネは20代のころ、葛飾北斎の富嶽三十六景の富士山を見て、「同じ風景を同じ場所から描いても、時間の移り変わりによって光も変わり風景も変わる」ことを発見。

以後、同じ風景でも時間の経過によって変化する光の表情を色で表現していきます。
40代になると、1つの題材を異なる時間帯で描く連作を多く発表、たとえば「ルーアン大聖堂」は33連作に及んでいます。
なぜモチーフを睡蓮に選んだの?
浮世絵に影響を受けたモネは、自宅に日本庭園をイメージした池を造り睡蓮を浮かべ太鼓橋をかけました。
はじめは、池の睡蓮と太鼓橋の風景を描いていましたが、しだいに時間とともに変化する水面の光とそこに映る睡蓮を色彩で描くことに没頭し、それが睡蓮の連作となりました。彼は、時には日の出前から日没まで睡蓮を描いていたと言われています。
なぜフランス共和国に寄贈したの?
1909年ごろ、モネは睡蓮だけを展示する部屋を作りたいと考え始めました。睡蓮が浮かぶ池に自然の光を表現することで、その部屋で鑑賞する人たちに心の安らぎを与えたいと願ったからです。
そこで第1次大戦(1914-1918)が終了すると、親友であり当時の首相ジョルジュ・クレマンソーに「睡蓮」の連作をフランス共和国に寄贈することを提案しました。
その提案を受けて、1927年にオランジェリー美術館が完成したのは、モネが亡くなった翌年でした。
モネが表現している情景とは
モネは同じモティーフを描くことで、季節や時間とともに変化する光の美しさをとらえようとしました。
太陽の光は、季節や天気、時間帯によって異なります。空の色や雲の動きによってもまた光の表情は変わります。
もちろん、一日の中でも朝の光は白っぽくまぶしい、夕暮れ時の光は桃色やオレンジ色で暖かく見えます。モネは「睡蓮」をさまざま時間帯で描きその作品を並べることで、移りゆく光の表情を表現しました。
その集大成が、オランジュリー美術館に展示されている「睡蓮」の連作なのです。ここで連作の一部をご紹介したいと思います。
「睡蓮」の鑑賞ポイントとは
睡蓮が展示されている部屋に入ったら、中央のベンチに座ってみましょう。360度が睡蓮の幻想的な世界を味わうことができますよ。
でも絵に囲まれているという圧迫感はなく、なんとなくホッとするような、心が落ち着くような不思議な心地良さなのです。ぼーっと座っている人もみかけますよ。

青みがかった池に映る薄紅色の雲が、遠くから見るとまるで満開の桜のよう。

睡蓮が浮き上がっているように見えます。ところどころのピンク色がアクセントになって指し色になってますね。

自宅池のある朝の様子。ピンク色の雲がうつり、しだれ柳が影を落しています。うららかな朝の印象です。

視力の低下に悩まされながら描いた最晩年の作品。夕暮れに映える水辺の強い色合いが、青緑の睡蓮から浮き立っているように見えます。
さて、いくつか作品を見てきましたが、鑑賞するポイントはたしかにモチーフは睡蓮ですが、水辺の表情だけでなく空や太陽や雲の動きや、さらには季節を想像できる面白さだと思います。それはやはり、モネが幾重にも色を重ねて変化する光を表現しているからでしょう。

作品「緑の反射」 の一部を切り取ってみました。微妙に色合いを重ねることで水辺の光に動きを感じ、睡蓮も水に浮いたり沈んだりしているよう。
さすが、印象派の巨匠の作品はスゴイ!!
オランジュリー美術館基本情報
オランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)
- 所在地:Jardin Tuileris 75001 Paris
- アクセス:地下鉄1番、8番、12番線 コンコルド(Concorde)駅で降りて、地上にあがると道路隔てチュイルリー公園入り口が見える。公園に入って道なりに歩いて数分
- 開館時間:午前10時から午後6時まで(午後5時15分までに入館)
- 休館日:毎週火曜日、毎月第一日曜日、5/1、 7/14(午前)、 12/25
- 入場料:一般9ユーロ 割引6.5ユーロ(18歳から25歳未満)
- ミュージアムパスの利用可能
- 作品のフラッシュ撮影禁止:以前は作品撮影禁止でしたが、現在はフラッシュ撮影のみ禁止
- ゆっくり鑑賞するなら午前中がおすすめ。
便利な外国為替レート計算機で日本円に換算できます
まとめ
オランジェリー美術館には、印象派の巨匠であり、光の画家であるモネが集大成として描いた「睡蓮」の連作が展示されています。 水辺の睡蓮を通して空や太陽や雲の動きや、一日の時間軸やさらには季節の移ろいまでも想像できる面白さを、この連作から感じられるのではないでしょうか。
この美術館の地下には、印象派の作品も常設されているので、そちらもご覧くださいね。
またモネファンには、マルモッタン・モネ美術館もおススメします。モネのたくさんの名作に見ごたえ十分ですよ。
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さて美術鑑賞を終えて外に出たら、私の大好きな彫刻家ロダンの「抱擁」を発見!!
チュイルリー公園は、そこかしこに有名な彫刻家の作品が置かれています。絵画のあとは彫刻を見ながらの散策も楽しいですよ。
“オランジュリー美術館、モネの「睡蓮」で壁一面に広がる幻想的な世界” への4件のフィードバック